「PHILIPPE WEISBECKER | Manufacturing」
フィリップ・ワイズベッカー トークショーレポート

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現在CLASKA Gallery & Shop "DO" 本店で開催中のフィリップ・ワイズベッカー新作展覧会「PHILIPPE WEISBECKER | Manufacturing」を記念し、12月5日(金)に行なったトークショー(会場:CLASKA 8F "The 8th Gallery")。ご参加くださった皆さま、ありがとうございました。早々にご予約で超満員となり、ご参加いただけなかった方々には口惜しい想いをおかけしてしまいました。たいへん貴重な機会となった本トークショーの模様を、ダイジェストですができる限りお伝えしたいと思います。

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左から、フィリップ・ワイズベッカーさん、通訳の中村さん、そしてトークショーのゲストとしてお越しいただいた八木義博さん(電通 アートディレクター)、澁谷克彦さん(資生堂 アートディレクター)、水口克夫さん(ホッチキス クリエイティブディレクター)です。トークショー全編に渡るスライドを準備された水口さんが、司会進行役も買って出てくださいました。


澁谷克彦さん(資生堂 アートディレクター)

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澁谷さんが手掛けられた資生堂のブランドビジュアルや、本社ビルの大理石の象嵌。社名「資生堂」の由来となった中国の古典「易経」の一節「万物資生(BANBUTSUSHISEI)」の文字がモチーフとなって込められています。

澁谷さん「ワイズベッカーさんの作品に出会ったのは10年以上前のことです。『素晴らしい。何かでご一緒したい』と思ったのとほぼ同時に、ワイズベッカーさんのイラストを使ってサン・アドが作ったサントリ―の『水と生きる SUNTORY』がADC賞を受賞し、一気に世の中に広く紹介されてしまいました。ほとんどのデザイナーはワイズベッカーさんのことが好きなはずですが、アートディレクター(以下 AD)というのはひねくれているものでして(笑)、すでにみんなが知っていて他のADにもやられてしまったら、ちょっと違うかなと思ってしまう面もあります。ただ、誰がどうディレクションするかで違ってくるはずです。それで『花椿』を40年ぶりにリニューアルするとなった際に、周りを優秀な人で固めようということで、ついにワイズベッカーさんにお願いしました。」

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澁谷さん「『花椿』には毎回化粧品のイラストを2年間描いていただいてきました。不思議なパース、味。毎回、皆で大喜びしています。」

ワイズベッカーさん「(時には大雑把なスタイルもありますが)繊細な仕事をしたい、上品で物静かなスタイルで作りたいと考えました。対象が描きやすいときも、『何だこれは!?』と思うときもありましたが、どんな物にもチャレンジを感じました。常に最良のものをやっていきたいので、納品の直前でやり直したこともあります。」


八木義博さん(電通 アートディレクター)

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主な仕事として、メニコンのコンタクトレンズ「Magic - 1day Menicon Flat Pack」、JR東日本「行くぜ、東北。」など。最近では、ワイズベッカーさんのドローイングを元に手掛けられたPanasonic 「LIFE IS ELECTRIC」のグラフィックデザイン、コマーシャルフィルム(下)で、ワイズベッカーさんと共に本2013年度のADC賞を受賞されました。



八木さん「この企画、実は5年前からあったものです。当時自分がPanasonic という企業からイメージするのは、CMに登場するタレントさんの顔でした。今後そうではないことをやってはどうか提案したいと考えていた際に、たまたま開催されていた展覧会でワイズベッカーさんの回路図の作品に出会い、ビビッときたんです。しかし最初はぜんぜんダメ、とボツに。昨今の企業方針の変化を見つつ再提案したところ『やろう!』となり、正式にワイズベッカーさんにお願いできました。『創業者の松下幸之助さんが電気に憧れた気持ちや発明家としてのクラフトマンシップ、そういったものにワイズベッカーさんのアートがフィットする』と丁寧に社内説得をするなどしてやっと実現しましたが、結果いろんな賞も受賞して、Panasonicさんにも喜んでいただけてよかったです。」

ワイズベッカーさん「アニメーションは、陶芸家に素材の土を提供したのみ、という感覚です。ADは、外界から来た自分のものでない題材を自分の中に取り込むのが素晴らしいですよね。以前ニューヨークタイムズの仕事で翌日の記事のための絵を描いていたのですが、優秀なADが居まして。あるとき自分の描いたイラストが使われていなかったので『あれ?』と思っていたら、3ヶ月後に突然載っていて、『この使い方のほうがマッチしている』と感じました。自分が思った『マッチ』は自分のものでしかないですが、ADが外から取り込んで考えるときに緊張感が生まれます。葛西薫さんともそうですが、自分が何を求めているのかがしっかりある方と仕事をするとき、自分に自由が感じられます。」


水口克夫さん(ホッチキス クリエイティブディレクター)

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水口さんは電通、シンガタを経て昨年ご自身の会社「ホッチキス」を立ち上げられました。これまでに手掛けられた代表的な仕事として、ソフトバンク 白戸家のお父さんのキャラクターグッズ、伊藤若冲の絵を採用したサントリー「響」の広告など。

水口さん「わたしは澁谷さん・八木さんと違ってワイズベッカーさんと直接お仕事してきたわけではないのですが、ホッチキスという会社を作るときワイズベッカーさんにホッチキスの絵を描いてもらえたら、名前が自分のなかでしっくり腑に落ちるのではないかと思いました。実は一緒に京都旅行をしたこともある10年来のお付き合いで、やっと。ワイズベッカーさんが居るバルセロナまで会いに行って作品を受け取り、会社に持ち帰ってシンボルとして飾っています。」

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水口さんがワイズベッカーさんを訪ねた際に撮影された、バルセロナの家(下)。

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ワイズベッカーさんのパリのアトリエ(写真提供:ワイズベッカーさん)

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バルセロナの家では多くの時間を料理に使い、バルセロナとパリでそれぞれ赤とグレーをテーマカラーに家具やしつらえも自作されているそう。

ワイズベッカーさん「わたしは、強く閉ざされたスタイルを持ったアーティストではありません。家具を作ったり、料理を作ったりする。自分にとっては『ライフスタイル』です。ジャムを作るのもその一環で、気に入った材料を選び、瓶を選び、ラベルにする紙を選び、選んだ紐で封をすることが大事。どのように自分が在るか、存在のあり方が重要と考えています。」

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水口さん「広告の仕事やお題を与えられるのと、自分の世界観の中で作品をつくるときは違うモードでやっていると仰っていましたね。」

ワイズベッカーさん「はい。(作品の場合は)モチーフは大事ではありません。そして、モチーフの周囲の余白・絵の対象そのものではなく空間を見て欲しいです。」

水口さんが最初に購入された、トラックの作品

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ワイズベッカーさん「わたしは絵が描けないから定規を使って描いているんです。定規で直線を描くか、手で円を描くか、それだけです。これはアメリカのトラックで、フランスのトラックは曲線が多くて描けません。(笑)」

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ワイズベッカーさん「(遠近法を持たない古来の日本画のスタイルは)日本に来るまで意識していませんでしたが、共通点を感じます。物を描くとき、立体的なものも、その『すべての面を見せたい』。物の存在感を表現しようとすると、オブジェは平らになり、パースペクティブや焦点がなくなっていきます。」

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作品の対象はよりシンプルな物となり、2年前にCLASKA Gallery & Shop "DO" 本店で行なった展覧会で発表された新作では「Line Work」と題し、ラインのみに。

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ワイズベッカーさん「紙の奥に何があるのか、探っています。それが何かわかるのは死んでからかも知れません。そしてまだ紙の上にオブジェがありますが今後、ほんのちょこちょことしたものになってくるかも知れませんね。ただ、完全に抽象ではなく、(上のカメラや下の電球のように)手掛かりになるオブジェは必要です。」

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最後にワイズベッカーさんより。「好きなら好きだし、嫌いなら嫌い。自由に見てください。」

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気づけば予定の1時間を40分もオーバーする盛り上がりでした。大拍手に包まれ終了です。

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他にも沢山のエピソードがありお伝えしきれておりませんが、皆さま素敵なお話をほんとうにありがとうございました!(右端はCLASKA Gallery & Shop "DO" ディレクターの大熊健郎です。)

そんなフィリップ・ワイズベッカーさんの「PHILIPPE WEISBECKER | Manufacturing」展は、12月29日(日)まで。ワイズベッカーさんの最新作、そして現在の境地に触れることができる、すばらしい展覧会になっています。お見逃しなく。

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[会場]CLASKA Gallery & Shop "DO" 本店
[会期]開催中~12月29日(日)11:00~19:00
[協力]貴田奈津子(Bureau Kida)、クリエイションギャラリーG8
*12月12日(木)~16日(月)の期間は会場の都合により、一部作品のみの展示となります。ご了承ください。